<先に結論>

最初にAIへ渡す仕事は、件数の多いものではなく「やり直しが起きている工程」から選んでください。効いたかどうかを、あとから数えられるからです。

任せる仕組みを作ろうと決めたあと、たいていの人は同じところで止まります。何から渡すか、です。

そこで多くの場合、件数の多い仕事が候補に挙がります。毎日いちばん多く発生しているもの。理由は分かります。数が多いぶん、削れる量も大きく見えるからです。

ただ、この選び方には弱点があります。渡したあとで、効いたのかどうかが判定できません。

件数で選ぶと、効果が読めなくなる

理由は3つあります。

1つ目。件数の多い仕事は、たいてい1件あたりが短い。 数が多いのは単純だからで、単純だから短い。100件あっても1件2分なら、合計は200分です。渡しても、日々の重さとしては変わった気がしません。

2つ目。件数の多い仕事は、渡したあとの確認も同じ件数だけ発生します。 100件渡せば、100件を見ることになりがちです。作業する側から確認する側へ回っただけで、手は空きません。

3つ目が本題です。効果を測る土台がありません。 その仕事にいま何時間かかっているかを、前もって測っている人はほとんどいません。測っていないものは、あとから比べられない。結果として「なんとなく楽になった気がする」で終わります。

その状態だと、次に何を渡すかも決められません。1つ目が効いたのかどうか分からないまま2つ目に進むことになるからです。

やり直しは、数えられる

ここで、やり直し(手戻り)に目を向けます。

やり直しには、他の指標にない性質があります。起きたら分かる、という性質です。もう一度やった、という事実が残ります。時間のように、あらかじめ測る道具を用意しなくても数えられます。

しかも、やり直しは時間を二重に食います。1回目の作業、やり直しそのもの、そして戻ってくるまでの待ち時間。件数のわりに重い、という形で効いてきます。

数えられて、しかも重い。最初に渡す先を選ぶ基準として、これ以上に扱いやすいものはあまりありません。

やり直しで選ぶ 起きたら分かる 「もう一度やった」が事実として残る 測る道具が要らない 前もって時間を計っていなくても数えられる 時間を二重に食う 1回目+やり直し+戻ってくるまでの待ち → 効いたかどうかを数えられる 件数で選ぶ 1件あたりが短い 数が多いのは単純だから、単純だから短い 確認も同じ件数だけ出る 作業する側から確認する側へ回るだけ 前もって測っていない いま何時間かかっているかを知らない → 効いたかどうかを判定できない
最初の1つを選ぶ基準。数えられて、しかも重いほうを選ぶ。
効いたかどうかが分からないと、2つ目の判断ができない。

やり直しの跡は、記憶ではなく記録から探す

やり直しが多い工程を思い出そうとしても、たいてい出てきません。終わった仕事は忘れるからです。特に、やり直して結局片づいたものほど記憶に残りません。

探す先は記録です。手を入れやすいのは、この2か所です。

  • 送信済みのメール:直近1か月ぶんを開いて、同じ相手・同じ件名が2回以上出ているところを探す。「先ほどの件、訂正です」「改めてお送りします」が出てくれば、そこが跡です
  • やりとりの履歴:チャットでも紙のメモでも構いません。同じ話題が日をまたいで2回出ていれば、1回で終わらなかったということです

出てきた工程を、多い順に3つだけ書き出してください。全部を洗い出す必要はありません。

渡す前と後で、2週間ずつ数える

選んだら、渡す前に数え始めます。順番を間違えないでください。渡したあとから数え始めると、比べる相手がいなくなります。

  • 渡す前の2週間:その工程で、やり直しが何件起きたか
  • 渡したあとの2週間:同じ数え方で、何件起きたか

記録するのは件数だけで十分です。何分かかったかは要りません。件数が半分になれば、待ち時間も一緒に減っています。

2週間という長さにも理由があります。1週間だと、たまたま静かな週に当たったのか、本当に減ったのかが分かりません。1か月だと、判断が遅すぎて次に進めません。

数字が動かなかったときの読み方

ここがいちばん大事なところです。やり直しの件数が減らなかった場合、渡し方ではなく、渡す先を間違えている可能性を先に疑ってください。

やり直しの原因は、大きく2つに分かれます。

  1. 作業そのものが原因:書く量が多い、転記が多い、抜けやすい
  2. その手前が原因:判断の基準が決まっていない、必要な情報が揃っていない

1つ目なら、作業を渡せば減ります。2つ目の場合、作業をいくら渡してもやり直しは減りません。手前が決まっていないまま作業だけ速くなると、間違ったものが速く出てくるだけだからです。

数字が動かなかったときは、渡す対象を「作業」から「その手前」に切り替えます。判断の基準を先に書き出して渡す。必要な情報の型を決めて渡す。ここが変われば、件数は動きます。

まとめ

  • 最初に渡す仕事を件数で選ぶと、効いたかどうかを判定できない。測る土台が無いため
  • やり直しは、あらかじめ測る道具を用意しなくても数えられる。しかも時間を二重に食うので、減れば効き方が分かりやすい
  • やり直しの跡は記憶ではなく記録から探す。送信済みのメールで、同じ相手・同じ件名が2回以上出ているところ
  • 渡す前の2週間と、渡したあとの2週間で件数を比べる。数え始めるのは渡す前
  • 件数が動かなかったら、渡し方ではなく渡す先を疑う。原因が作業の手前にあるなら、作業を渡しても減らない

最初の1つは小さくて構いません。効いたかどうかが数字で分かる形にしておけば、2つ目からの判断が速くなります。

今日のアクション

  • 送信済みのメールを直近1か月ぶん開き、同じ相手・同じ件名が2回以上出ている箇所を探す
  • 出てきた工程を、多い順に3つ書き出す
  • いちばん多い1つを選び、今日から2週間、やり直しの件数だけ数え始める