<先に結論>

AIに作らせたものは、自動のチェックが全部通っていても、出す前に一度、人が最後まで通しで触ってください。自動のチェックが守っているのは正しさだけで、見えるか・押せるか・伝わるかは守っていません。

AIに何かを作らせると、最後に報告が返ってきます。「チェックは全部通りました」。この報告そのものは正しいことが多い。ただし、何を確かめた報告なのかは、たいてい書かれていません。

**お知らせを一斉に送り、送ったものをあとから読み返せるページに載せる。**そういう道具を1つ仕上げたときのことです。自動のチェックは最後まで全部通っていました。それでも、そのあとに見つかった不具合が7件あります。7件とも、実際に画面を開いて押したときにしか出ませんでした。

出たのは、こういう種類のものだった

見つかった中身を並べます。

  • 画面には見えているのに、押せないボタンがあった
  • 操作の結果を知らせる文が、画面のはるか上のほうに出ていた。読む人の目に入る位置ではない
  • あとから増える部分だけ、見た目の指定が当たっていなかった。最初から置いてある部分は正しく、増えたものだけが崩れる
  • 想定外のことが起きたとき、読む人の画面に英語のままエラーが出る

どれも動かないわけではありません。呼び出せば正しい答えが返ってきます。だから自動のチェックは通ります。通ったうえで、使えない。

自動のチェックが見ているものは、案外せまい

自動のチェックがやっているのは、部品を呼び出して、返ってきた答えが想定どおりかを比べることです。

この形で確かめられるのは、正しさです。入れた値に対して、出てくる値が合っているか。金額の計算、日付の判定、保存した内容がちゃんと読み出せるか。ここは人が目で追うより自動のほうが強い。何度でも、漏れなく、同じ精度で確かめられます。

ただしこの形では、画面を描いていません。描いた画面を目で見てもいないし、指で押してもいない。ですから次の4つは、原理的に守備範囲の外にあります。

守備範囲の外にある4つ何を確かめるものかなぜ自動のチェックの外なのか
見えるか出てはいるが、目に入る場所にあるか画面を描いていないから
押せるか表示されているが、実際に反応するか指で押していないから
伝わるか出た文が、読む人の言葉になっているか出た文が読む人に伝わるかは判断しないから
あとから増えたものにも効くか最初から置いてある部分だけで確かめていないか最初の状態しか作らないから

先の7件は、全部このどれかでした。自動のチェックの外側にしか残らない種類の不具合なので、そこに集まったと考えるほうが自然です。

人が開いて押したときに、はじめて見える範囲 自動のチェックが見る範囲 呼べば、正しい答えが返るか 見えるか 押せるか 伝わるか あとから増えた分 にも効くか 見つかった7件は、すべて外側にあった
内側と外側で、守っているものが違う。
内側は何度でも自動で確かめられる。外側は、人が画面を開いて押すまで誰も見ていない。

止めたのは、出す前に一度、通しで触ったこと

7件が世に出なかった理由は単純で、出す前に人が画面を開いて、最後まで押したからです。

このとき効いたのは、業務の1巡を最後まで通したことでした。今回で言えば、次の順番に押していきました。

1巡の位置押すものふだんの触られ方
前半送る → 載る作った直後に必ず触る。ここで「動いた」と思って止まりやすい
後半直す → 直した記録が見える → 消すめったに使わないぶん作りが薄く、しかも「あとから増えた部分」が集まる

機能を1つずつ押す形だと、たいてい前半で止まります。作れた、出せた、まあ大丈夫だろう、と。ところが不具合は後半に多く出ます。

もう1つ。触る人は、作った本人でなくて構いません。 ただし少なくとも1回、実物の画面が要ります。設計の意図を知っている人が触ると、押せないボタンを無意識に避けてしまいます。知らない人が触れば、そこで止まる。止まったこと自体が結果になります。

自動のチェックを減らす話ではありません

念のため書いておきます。これは「自動のチェックは当てにならない」という話ではありません。

正しさの確認は、自動のほうが向いています。人が毎回すべての計算を手で追うことはできません。この7件の中に、計算や保存の正しさに関わるものはありませんでした。自動のチェックが効いていたからこそ、残ったものが4つの型に集中したとも言えます。

守備範囲の違う2つを、両方置く。それだけです。

自動のチェック出す前に人が通しで触る
守るもの正しさ(入れた値に対して、出てくる値が合っているか)見えるか・押せるか・伝わるか
強いところ何度でも、漏れなく、同じ精度で確かめられる実物の画面で、止まる場所がそのまま出る
回数作っている間ずっと出す前に1回

AIに作らせるときは、報告の読み方が変わります

ここが実務で効くところです。

AIに作らせると、「テストが全部通りました」という報告が返ってきます。これを「完成しました」と読むと、4つの型がそのまま外に出ます。この報告は、正しさについての報告です。 それ以上のことは言っていません。

ですから、受け取り方をこう変えます。

「全部通りました」→「正しさは確認できたのですね。では、開いて押したときはどうですか」

そのうえで、自分で1回触る。作らせる速さが上がるほど、この一手の重みは増します。作る時間が短くなっても、画面を人が見る時間は短くならないからです。

なお、先日書いた見張りの話は、出したあとに動かすものでした。今回の通しで触る一手は、出す前に置くものです。時点が違うので、どちらかで代わりにはなりません。

まとめ

  • 自動のチェックが守るのは正しさ。見えるか・押せるか・伝わるかは守らない
  • 外側に残るのは4つの型。目に入らない位置に出る/押せない/読む人の言葉になっていない/あとから増えた部分にだけ効いていない
  • 出す前に、業務の1巡を最後まで通しで押す。送る→載る→直す→履歴→消す。不具合は後半に多い
  • 触る人は作った本人でなくてよい。知らない人のほうが、むしろ止まる
  • 自動のチェックは減らさない。守備範囲の違う2つを両方置く

今日のアクション

  • いま「チェックが通ったので大丈夫」としているものを1つ選ぶ
  • その業務の1巡を、最後まで実際に押してみる(終わりのほうの動きまで飛ばさない)
  • 目に入らない・押せない・英語のまま出る、が1つも無いか確かめる