先に結論を。自分が止まると全部止まる状態は、倒れる前には見えません。だから倒れる前に、紙の上で「自分のいない3日間」を先にやってみる。止まった箇所が、あなたの事業の急所です。

ひとりで事業を回していると、毎日はなんだかんだで回ります。多少しんどくても、今日の仕事は今日のうちに終わる。回っている以上、困りごとは表に出てきません。だから、自分が止まったときのことを考える機会が、そもそも来ないのです。

考えるきっかけが来るのは、たいてい止まってからです。熱を出して寝込んだ日。身内に何かあって、数日動けなくなった日。そこで初めて、問い合わせも見積もりも納品も、ぜんぶ自分を通っていたことに気づきます。

回っているうちは、危なさが見えない。これは、ひとりで事業を回している人によくあることです。

「今は平気そうに回っている」ほど、危なさは隠れる

回っている状態そのものが、危なさを見えなくします。

自分が止まると全部止まる状態には、痛みという警告がありません。たとえば、こういう仕事です。

  • 問い合わせも、あなたが返している
  • 見積もりも、あなたが出している
  • 納品の最終チェックも、あなたがやっている

これらはぜんぶ、あなたが動いているあいだは滞りなく流れます。動けているうちは、痛くもかゆくもない。それどころか「ちゃんと回っているな」と手ごたえすら感じます。

ここに落とし穴があります。この手ごたえは、安心の根拠になりません。動けているから流れているだけで、動けなくなれば同じ仕事が同時に止まります。止まってから、入金が遅れ、お客さんを待たせ、お金と信用が削れていく。そこでようやく「ここが急所だったのか」と分かる。倒れてから気づく設計になっているから、対策がいつも後手に回るのです。

だから、倒れる前に紙の上でやってみる

やることは1つ。「明日から3日、自分がまったく連絡を取れなくなったら、何が止まるか」を書き出すだけです。

実際に休む必要はありません。頭の中で、3日間だけスイッチを切る。そのあいだ、メールも電話もチャットも一切見られない、という前提を置きます。

そのうえで、自分の仕事を1つずつ思い浮かべ、それぞれにこう問います。

  1. これは、自分がいなくても進むか
  2. それとも、自分が戻るまで止まったままか

止まるものに、しるしをつけていきます。それだけです。机の上で15分もあればできます。頭の中で3日止めてみるだけなので、事業に実害は出ません。それでいて、実際に倒れたときと同じ景色が先に見えます。倒れてから気づくのと、紙の上で先に気づくのとでは、打てる手の数がまるで違います。

止まった箇所が、あなたの事業の急所

しるしがついた仕事こそ、あなたの事業の一番弱いところです。

3日止めてみると、たいてい見えてきます。「これは自分が3日いなかったら、お客さんを待たせる」「これは止まったら、お金が入ってこない」。ふだんは流れているせいで気づかなかった詰まりが、止めてみると急に輪郭を持ちます。詰まりが起きるのは、すべての仕事が自分ひとりを通っているからです。

全部が自分を通る(いま) 問い合わせ 見積もり 請求 納品確認 自分ひとり 3日抜けると全部止まる ここが事業の急所 手前を分担する(これから) 問い合わせ下書き 見積もり準備 請求の下ごしらえ 自分は最後の判断だけ 抜けても手前は進む
全部が自分ひとりに集まっていると、3日抜けたとき同時に止まる——そこが急所。
手前の作業を分担しておくと、自分が抜けても手前は流れ続ける。

しるしがついた中でも、次の2つは特に赤信号です。

  • お金が止まるもの(請求・入金・受注が自分経由)
  • 信用が傷つくもの(問い合わせ・納期連絡が自分経由)

この2つが赤信号なのは、遅れたときに取り返しがつきにくいからです。入金が止まれば資金繰りに直接響きます。連絡が滞れば、待たされたお客さんの信頼は数日で目減りします。どちらも「あとでまとめて」が効かない性質を持っています。

だから手当ての順番も、ここから決まります。全部いっぺんに、ではありません。一番こわい1つから。急所が見えれば、打つ手の順番は自然と決まります。

逆に、3日くらい止まっても誰も困らない仕事もあります。それは今あわてなくていい。先に守るのは、止まると痛いところからです。

急所を見つけた、その先

まずは、赤信号の急所を1つ見つけるところまでで十分です。

見つけた急所は、外に出る手前まで働き手に任せて、最後の確認だけを自分が握る形に変えていけます。その具体的なやり方は、別の回で書きます。

今日は、診断だけでいい。全部を一度に変えようとしないことです。一番こわい急所が1つ見えていれば、次の一歩はそこから始められます。

まとめ

  • 自分が止まると全部止まる状態は、回っているうちは症状が出ない
  • 倒れる前に、紙の上で「自分のいない3日間」を先にやってみる
  • 止まった箇所が事業の急所。特に「お金が止まる・信用が傷つく」が赤信号
  • まずは赤信号の急所を1つ見つける。手当ての進め方は別の回で

今日のアクション

3日間、自分がまったく連絡を取れない前提で、次の2つを書き出してみてください。

  • 自分が3日いないと、止まってしまう仕事を1つ
  • そのうち、止まると「お金」か「信用」に響くものに、◎をつける

◎がついたものが、あなたの事業の急所です。今日はそれを1つ見つけるだけで十分です。