2つ目を足した日に、1つ目の穴が見える
商品やお客様が1つから2つに増えるとき、用意し忘れが起きるのは新しく作るほうではありません。1つ目のときに作って、いまも問題なく動いている仕組みのほうです。出す前の点検で見つかった6件のうち5件は、1つ目と2つ目の作業一覧を並べて、片方にしか無い行を数えるだけで出ました。
<先に結論>
商品やお客様が1つから2つに増えるときは、新しく作るものだけでなく、1つ目のときに作った仕組みも1つずつ見直してください。用意し忘れは、いまも問題なく動いているもののほうで起きます。
事業を始めてしばらくのあいだ、扱うものは1つです。商品が1つ、お客様が1人、案件が1件。買った方への案内も、お渡しの手順も、その1つに合わせて作っていきます。
そこへ、2つ目が来ます。商品をもう1つ出す。お客様が2人目になる。案件が2件並ぶ。
このとき手を動かす先は、新しいほうです。ページを用意する、料金を決める、案内の文面を書く。何を作ればよいかは分かっているので、順に片づけていけば終わります。
ところが、実際に用意し忘れが起きたのは、そちらではありませんでした。
出す前の点検で、6件が出てきた
新しい商品を出す準備が、どこまで進んでいるかを点検しました。やることを1行ずつ書き出した一覧があるので、それを上から順に見ていって、やり残しが無いかを確かめるだけの作業です。
こういう点検で出てくるのは、ふつう「一覧にあるのに、まだ終わっていない作業」です。今回は違いました。そもそも一覧に1行も書かれていない作業が、6件ありました。気づかなければ、そのまま出していたものです。
この2つは、見つかりやすさがまるで違います。終わっていない作業は、進み具合を見れば残っていることが分かります。一覧に無い作業は、進み具合をいくら見ても出てきません。進み具合が答えているのは「一覧にある行が、どこまで終わったか」だけだからです。 一覧そのものが欠けていると、点検は「全部終わっています」と答えます。
いちばん重かったのは、先に出した商品あてのメール
買ってくださった方に、受け取り方を書いたご案内が自動で届く。この仕組みは、1つ目の商品を出したときに作ってあります。買われた合図を受け取ったら、用意しておいた文面を送る、という作りです。
ただ、その文面も、案内している中身も、1つ目の商品の専用に書かれていました。商品の名前も、受け取り方も、送る文面の中に直接書き込んであります。買われたのがどちらの商品かを見て、送る文面を選び分ける作りにはなっていません。
つまり、新しい商品を買った方に、先に出した商品のご案内が届く形になっていた、ということです。出す前の点検で見つかったので、実際にどなたかに届いてしまったわけではありません。
では、なぜこれが一覧から落ちたのか。
作業の一覧は、「これから作るもの」を思い浮かべながら書きます。ページを作る、料金を決める、文面を書く。どれも、いまは無くて、これから用意するものです。ご案内のメールは、そこに入りませんでした。すでに有るからです。
結果として、一覧は「ご案内のページを作る」で終わり、その先にある「買った方へ、どうやってお知らせするか」は、誰の担当にもなりませんでした。
では、なぜ「すでに有る」もののほうは、そのまま信用されたのか。
壊れていないものは、点検されません
動いていたからです。
1つ目の商品のときに作ったメールの仕組みは、その日からずっと動いていました。壊れていないものを、わざわざ見に行く理由はありません。
ここに落とし穴があります。
対象が1つしか無いあいだ、「1つ専用に作られた仕組み」と「何個あっても大丈夫な仕組み」は、まったく同じように正しく動きます。
中身の違いを書きます。1つ専用の作りは、送る文面の中に商品の名前と受け取り方が直接書いてあります。何個あっても大丈夫な作りは、買われた商品を見て、それに合う文面を選んでから送ります。作りとしてはまったく別物です。
ところが、商品が1つしか無いあいだは、どちらも同じ正しいメールを送ります。選び分ける必要が一度も発生しないので、選び分ける力があるかどうかが表に出ません。外から動いている様子を見ているかぎり、どちらなのかは分からないのです。 区別がつく日は、2つ目を足した日にしか来ません。
1つ専用になりやすいのは、こういう場所
6件のうち5件が、この型でした。並べてみると、特別な場所は1つもありません。どれも1つ目のときに一度作って、それきり触っていないところです。
| 仕組みの場所 | 1つ目のぶん | 2つ目のぶん |
|---|---|---|
| 買った方へ自動で送るご案内 | 先に出した商品あてに書かれている | 行が無い(先に出したほうのご案内が届く形になる) |
| お知らせを配る道具への登録 | 登録されている | 行が無い |
| お渡しするものの置き場 | 用意されている | 行が無い |
| 出したことを知らせる文面 | 行はある(まだ出していない) | 行が無い |
| 通しでの動作確認 | 済ませてある | 行が無い |
右の列が、そろって空いています。この、片方にしか行が無い状態が抜けです。
5件に共通しているのは、**どれも「1つ目のときに一度やれば、あとは放っておいてよかった作業」**だということです。登録する、置き場を作る、通しで動かして確かめる。1回で済ませた作業ほど、2つ目のときにもう1回やる必要があることを忘れます。毎日くり返す作業なら、2つ目が来た時点で手が止まるので、その場で気づきます。
「ほかに抜けは無いか」と考えても、途中で止まります
最初にやったのは、思い出す方法でした。「ほかに何か抜けていないか」と考えて、心当たりを挙げていく。これは途中で行き詰まります。思い出せるのは、自分が気づいている場所だけだからです。 気づいていない場所は、いくら考えても出てきません。しかも、いつ終わってよいのかが分かりません。
効いたのは、並べて当てる形でした。やり方は3つの手順に分けられます。
1. 1つ目について書いてあるものを、集められるだけ集める。 作業の一覧だけではありません。たとえば手順書、道具の設定画面、1つ目を出したときの準備メモ、実際に送っている文面そのもの。「1つ目のために用意したもの」の記録は、たいてい1か所には収まっていません。ここで集め残すと、そのぶんは最後まで出てきません。
2. そこに出てくる作業を、1行ずつ並べる。 「ご案内を自動で送る」「配る道具に登録する」「置き場を用意する」のように、やったことの単位で書き出します。細かさは揃っていなくてかまいません。あとで当てられる粒度なら十分です。
3. 1行ずつ、「2つ目のぶんはどこにあるか」を当てていく。 答えは3つのどれかになります。行がある/行が無い/2つ目には要らない。 このうち「行が無い」が、そのまま抜けです。
3つ目の「要らない」を用意しておくのが、地味ですが大事なところです。1つ目にあるもの全部に、2つ目のぶんが要るわけではありません。要らないものをその場で「要らない」と決めて外すから、残った「行が無い」だけが手を打つ対象になります。ここを2択にすると、判断を保留した行が積み上がって、結局どこまでやれば済むのかが分からなくなります。
6件のうち5件は、これで出ました。考えて見つけたのではありません。並べたら、残ったのです。
抜けは「思い出せたもの」ではなく「片方にしか無い行」として出てくる。
| 思い出して探す | 対にして数える | |
|---|---|---|
| やること | 「何か抜けていないか」を考える | 1つ目の行を並べ、2つ目に同じ行があるか当てる |
| 見つかるもの | 自分が気づいている場所だけ | 片方にしか無い行が、全部 |
| 終わり方 | いつ終わったのか分からない | 行を当て終わったら終わり |
| 見つからないもの | 気づいていない場所 | 1つ目のときにも行が無かった作業 |
作業の量が、思いつきの量ではなく行数で決まります。並べ終えれば終わりなので、どこまでやれば済むのかも先に分かります。
この数え方で出なかったものが、1件あります
表のいちばん下の行に書いたとおり、このやり方にも穴があります。6件のうち1件は、これでは出ませんでした。
対にして数えるやり方は、1つ目のほうに行があることが前提です。1つ目のときにも無かった作業は、並べても片方だけの対になりません。両方とも空欄なので、目立たないのです。
その1件は、以前に自分で書いた約束を読み返していて見つかりました。ここは別の探し方が要る、ということです。
もう1つの探し方は、外に向けて書いたものを読み返すことです。 販売のページ、お客様に渡す案内、規約。そこには「こうします」と約束した文が入っています。その約束を1つずつ拾って、果たすための作業が実際に用意されているかを当てていきます。1つ目のときに書いた約束でも、外に出ている以上は2つ目にも効きます。
2つのやり方は、探している場所が違います。対にして数えるほうは、自分の手元にある記録を突き合わせます。約束を読み返すほうは、外に出した文を起点にします。1つ目のときから手元に無かった作業は、外に出した文のほうにしか痕跡が残りません。
対で数えるやり方は万能ではなく、「1つ目にあって2つ目に無い行」だけを、確実に、機械的に出してくれる道具だと思ってください。
それでも、6件のうち5件はこの方法で出ました。
商品だけの話ではありません
同じことは、対象が1つから2つになるところなら、どこでも起きます。
- 2人目のお客様を迎えるとき(1人目の名前が、どこかに直接書かれていないか)
- 2件目の案件を並行させるとき(1件目の前提のまま動いている手順が無いか)
- 2つ目の販路を足すとき(1つ目の販路にしか通知が飛んでいないか)
いずれも、1つのうちは正しく動いています。だから点検の対象から外れます。2つ目を足す日は、新しいものを作る日であると同時に、1つ目のときに作ったものを1行ずつ読み直す日でもあります。
まとめ
- 2つ目を足すときに用意し忘れが起きるのは、新しく作る部分ではなく、1つ目のときに作って動いている仕組み
- 対象が1つのあいだは、「1つ専用」と「何個あっても大丈夫」が同じ動きをするので区別がつかない
- 思い出して探すと、気づいている場所しか出ない。1つ目の行を並べて対を当てると、片方にしか無い行が機械的に出る
- 判定は「行がある/行が無い/要らない」の3つ。「要らない」を用意しないと、保留した行が積み上がる
- ただし「1つ目のときにも無かった作業」は対では出ない。そこは外に向けて書いた約束を読み返して当てる
今日のアクション
- いま1つしか無いもの(商品・お客様・案件・販路など)を1つ選ぶ
- それについて自分が用意した作業を、思いつく限り行にして並べる
- その1行ずつに「2つ目のぶんは、行があるか・行が無いか・要らないか」を当てていく
- 残った「行が無い」を、そのまま作業の一覧に足す